GENTLE GIANT

GENTLE GIANT

投稿日:2018年12月5日 更新日:

バンド概要

イギリスでシャルマン3兄弟を中心に結成されたバンド、GENTLE GIANT(ジェントル・ジャイアント)です。
1970年にファーストアルバムを発表し、1981年の解散まで、プログレッシブロックにおける名作を数多く残したバンドです。当時のイギリスでのセールスや人気は伸びなかったようですが、他のバンドでは到底思いつかないような曲を数多く作っており、5大プログレッシブロックバンドに次ぐ重要バンドと言えると思います(個人的にはマスト)。

5作目まではメンバーチェンジがあったものの、それ以降は不動のメンバーで解散まで活動しています。
1作目はハードロック調の演奏、クラシックの導入やThe Beatlesに通じるイギリスらしい曲が並び、バンドの方向性を模索していたような印象がありますが、アルバムを発表するごとに独自性を増していき、他のバンドでは作りえない音楽を作っています。
GENTLE GIANTの独自性のある曲作りに影響されているアーティストは多く、プログレ界隈でもフォロワーは沢山います。

プログレッシブロックバンドを紹介する上で、そのバンドの特徴として「ジャズ要素が強い」だとか「変拍子を多用している」などいくつか表現方法がありますが、GENTLE GIANTが他のバンドと異なる特徴(強味)は概ね以下の要素だと思います。

1.歌えるメンバーが多い
5作目以降の5人体制になってからの構成で説明すると、5人中2人がリードヴォーカルをとっていて、残り3人はライブでもコーラスをとっており、声による見せ方が非常に豊富です。アルバム「Octopus」のKnotsや「Free Hand」のOn Reflectionなどの4声コーラスによるアプローチなど、他のバンドでは実現が難しい(そして憧れる)曲を作りだしています。
また、声質の異なるメインヴォーカル(力強い歌声のデレク・シャルマンと繊細な声のケリー・ミネア)が2人いることによって、曲中でヴォーカルチェンジすることにより、曲の緩急をつけたりと様々なアプローチをしています。

2.マルチプレイヤー揃い
5人体制になってからのLIVE DVDを見てぶっ飛んだのを今でも良く覚えています。LIVEで各メンバーが演奏した楽器を以下に紹介します。
・デレク・シャルマン(基本ヴォーカルの人)
→サックス、ベース、タンバリン、リコーダー、パーカッション
・レイ・シャルマン(基本ベースの人)
→トランペット、ヴァイオリン、リコーダー、アコースティックギター、パーカッション
・ケリー・ミネア(基本キーボードの人)
→チェロ、ヴィブラフォン、リコーダー、パーカッション、(別途ギターを披露しているのも確認済み)
・ゲイリー・グリーン(基本ギターの人)
→リコーダー、パーカッション
・ジョン・ウェザーズ(基本ドラムの人)
→ヴィブラフォン、タンバリン

各メンバーが1曲の中で複数回楽器を持ち替えることも珍しくなく、ライブでもCD音源と変わらず様々な楽器を演奏する様は圧巻の一言!ヴァイオリンを弾きながら歌ったり、ギターを弾いた直後にリコーダーを吹いたりと大忙し。このようなことをやっているバンド自体少ないので、視覚的にも面白いライブだと思います(プロモーションビデオでも楽器を持ち替えて演奏しています)。

3.複雑な曲展開、演奏ながらもポップさを感じる
アルバムを発表するごとにバンドの独自性が顕著になってきて、その表現方法が複雑な変拍子を用いたものや、ヘンテコに聞こえなくもないような変わった演奏など様々ですが、一貫してポップさを感じることができます。物凄くポップな曲なのに、演奏を聴くと恐ろしくマニアックなことをしているという印象です。これが癖になる要因のひとつであることは間違いないでしょう。

プログレッシブロック自体が敷居の高い音楽であると思うのですが、その中で更に特異な存在であるGENTLE GIANT。今の時代に聴いてもすぐに耳に馴染むような音楽ではありません。が、一度ハマると長年聴き続けるようになるという素敵なバンドです。未聴の方は是非この機会に聴いてみてください。

個人的なおススメは4作目の「Octopus」、5作目の「In A Glass House」、7作目の「Free Hand」です(うんうん悩みながらも無理やり3枚に絞り込みました・・・)。

アルバムレビュー

Gentle Giant(1970)

Derek Shulman:lead vocal, bass
Ray Shulman:bass,violin,guitar,percussion,vocal
Phil Shulman:lead vocal,sax,trumpet,recorder
Kerry Minnear:keyboard,bass,cello,lead vocal,percussion
Gary Green:guitar
Martin Smith:drums,percussion

1970年発表の第1作目になります。
巨人(バンドのトレードマーク)が非常に印象的(ちょっと気味悪い感じもしますが・・・)なジャケットです。見開きになっており、開くと巨人の手の上に6人のメンバーが立っています。

デフォルメされたメンバーは可愛く描かれながらも特徴を捉えていて本人に良く似ています!

本作ではハードロック調のへヴィーな演奏やクラシックの手法を用いた表現を用いるなど、アプローチ自体は当時活躍していた他のバンドと共通する部分が多いように思います。GENTLE GIANTの超個性的な部分が開花する前の作品ですので、良く言えば割と聴きやすい印象です。

とは言え、各メンバーが複数楽器を演奏したり、曲によってメインヴォーカルを変えたりと、今後の作品の核になる部分も見え隠れしています。このアルバムを出発恬として、今後どのようにバンドが熟成されていくのかを知るためにも非常に興味深い作品です。

GENTLE GIANTの中期以降の作品を聴いた後に本作や2作目を聴くと、GENTLE GIANTらしさが薄く拍子抜けする感がありますが(私自身がそうでした)、個々の曲自体はとても良くできており、バンドの1作目にしては良い作品だと思います。シャルマン兄弟やケリー・ミネアの担当楽器を見る限り、クラシックを学んできたメンバーが多くいるため、音楽に対するきちんとした下地ができあがっていたことが要因だと思います。

中期以降のライブでも演奏されているFunny Waysを筆頭に、佳曲揃いのアルバムです。

Acquiring the Taste(1971)

Derek Shulman:lead vocal,alto sax,clavichord,cowbell
Ray Shulman:bass,violin,guitar,viola,vocal
Phil Shulman:lead vocal,alto sax,tenor sax,trumpet,piano
Kerry Minnear:keyboard,bass,cello,lead vocal,percussion
Gary Green:guitar,bass
Martin Smith:drums,percussion

ゲストプレイヤー:
Tony Visconti:recorder,bass drum
Paul Cosh:trumpet,organ

1971年発表の第2作目になります。
何とも下品なジャケットですが、レコードを見開きの状態にすると桃を食べようとしているということがわかります。意図がわかりませんが、このバンドらしいユーモアの一部でしょうか。

音楽的にはGENTLE GIANTの目指す部分が1作目より明確になった分、好き/嫌いが分かれそうな作品です。
1曲目から暗い曲調で、優しく歌うケリー・ミネアがヴォーカルも関係していると思いますが、アルバム通しておとなしめの印象を受けます。

ただし、曲に含まれているアイデアは前作を凌駕し、次の展開が一切読めません。ロック、クラシック、ジャズ、R&Bなどの音楽を融合させながら、確かな演奏力とアイデアで音楽を構築しているイメージです。

本作はゲストプレイヤーも含めて、より使用楽器が増えています。恐らく複数楽器を扱うのを売りにしているところもあるのではないかと思うくらい。こういった独自性は非常に好きです!

パッと聴いた感じではすぐにわからないアルバムなので、他のアルバムを聴いてから聴くのをおすすめします。

Three friends(1972)

Derek Shulman:vocal
Ray Shulman:bass,violin,guitar,vocal
Phil Shulman:sax,vocal
Kerry Minnear:keyboard,percussion,vibraphone,vocal
Gary Green:guitar,percussion
Malcolm Mortimore:drums

1972年発表の3作目です。
アルバム1曲目の「Prologure」のようなハードな曲があるからか、前作よりも躍動感溢れ、聴きやすくなったアルバムに仕上がっていると思います。過去2作を土台に、よりバンドがやりたい方向性に突き進んでいる感じでしょうか。
相変わらずのアイデアを詰め込んだアルバムで、全6曲中、他のバンドが作れそうな曲は(私個人の意見ですが)わずか2曲。次作からGENTLE GIANTの世界観が完全に確立される(と思っている)のですが、本作と次作についての(私が思う)違いについては次作(Octopus)の方で記載します。

それにしても色々な意味で凄いバンドで、聴けば聞くほど新しい驚きがあります。GENTLE GIANTの大きな核となっているのがカラフルで変幻自在なケリー・ミネアのキーボードだと思うのですが、本作では序盤の35秒あたりまでは普通にピアノを弾いています(コードをリズムに合わせて弾いています。その後は過去2作以上に自由に羽ばたいていますが。)。ごく普通に演奏しているのが驚きということは、やはり普通が普通でないということになります。長年聴いているから分かる部分もありますが、どれだけこのバンドが普通でないかということが分かる感想ではないでしょうか。

1曲目の爽快感溢れる演奏(レイ・シャルマンのピッキング・ベースが大きく貢献しています)から、GENTLE GIANTらしい複雑でひねくれたような演奏もあり、ラストは壮大なコーラスで締めくくられ、コンセプトアルバムとしても申し分なしの内容です。本作をGENTLE GIANTのベストと評価する方も多いのではないでしょうか。次作以降の作品に埋もれがちな印象ですが、本作も劣らずの名盤です!

Octopus(1973)


Derek Shulman:vocal,alto sax
Ray Shulman:bass,violin,guitar,percussion,vocal
Phil Shulman:sax,trumpet,vocal
Kerry Minnear:keyboard,percussion,vibraphone,cello,vocal
Gary Green:guitar,percussion
John Weathers:drums

1973年発表の4作目です。
YESのジャケットを多く手掛けたロジャー・ディーンがジャケットを担当しています。過去3作品のジャケットと比べると雰囲気があって非常にカッコイイです。アメリカ版のジャケットはタコの瓶詰版です。

当時本作がどれだけ評価されたか分かりませんが、今となってはプログレッシブロックの中でも名盤と言われる作品で、GENTLE GIANT未聴の方はまず本作から聴いていただければ間違いないかと思います。

本作でドラムがジョン・ウェザーズに変わりました。前作までのドラマー達(マーティン・スミスとマルコム・マルティモア)も非常にうまいドラマーですが、GENTLE GIANTに合うドラマーとしてはジョン・ウェザーズに軍配が上がると思います。

過去の2人に比べてピッチの高い明確な音でタイトなリズムを叩き、リズムキープに終始しないアイデア溢れる演奏スタイルがバンドに合っていると思います。その証拠になるか分かりませんが、バンド解散までドラマーはずっとジョン・ウェザーズです。各メンバーの音楽的成熟等もありますが、前作と比べての作品の違いはドラマーの交代にあると思います。

バンドに合うドラマーを獲得したことに加え、GENTLE GIANTのお家芸になる4声コーラス主導の曲(Knots)や超絶技巧を駆使したアンサンブルを見せる曲(The Boys In The Band)があったりと、もう他のバンドが追い付けない境地にまで達成した感があります。

The Boys In The Bandは他のバンドにも多大な影響を与えており、PFMもお手本にしているほど。他のバンドでテクニカルな複雑なキメをしている曲があると「お、GENTLE GIANTだ!」と思うくらい影響を与えた曲だと思います。とにかくカッコイイ。

複雑な曲構成にカラフルなキーボードやサックスが音を重ねて派手に聴こえますが、ジョン・ウェザーズのタメの利いたドラム(シンバルを叩くタイミングが絶妙!)も特筆もの。6人のメンバーが一斉に全力疾走するように展開されるイントロは何度聴いても鳥肌が立ちます。

1973年あたりはプログレッシブロックが一番勢いのあった時期だと思います。多くのバンドが大作志向の曲を発表していますが、GENTLE GIANTは独自路線まっしぐら。独自性を極めていく姿そのものがプログレッシブであると思います。

どのような思考を持てばこのアルバムのような曲を作れるのか興味は尽きませんが、独自路線で音楽を突き詰めたGENTLE GIANTの1つの結論に達した大傑作だと思います。

-GENTLE GIANT

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